竹の砂糖とは何か
この本を読んでいて、冒頭の辺りで砂糖の原料となったものはサトウキビ以外にも色々あり、珍しいものでは竹を原料にした砂糖もある、という記述があった。砂糖の世界は奥が深いなと思ったが、読み進めても竹の砂糖に関する記述はその一文だけで、巻末に参考文献の記載もなく、ググっても特にそれっぽい情報もヒットせず、真偽不明の状態になってしまった。
実態はよくわからないが、歴史の史料には「竹の砂糖」というのも出てくるし、(略)
https://sugar.alic.go.jp/tisiki/ti_0507.htm 世界の砂糖史 (4)~砂糖キビと砂糖大根の戦い~ お砂糖豆知識[2005年7月]
唯一それらしき記述を見つけたのが上の引用部で、さすがalic(農畜産業振興機構)だ! と思ったのも束の間、著者が同一人物(川北稔)だったので、同じような記述しかなかったし、「歴史の史料」が何かも分からないので、竹の砂糖の実在は不明のままだ。この結論のまま終わるのも悔しいので、いくつかの情報と推論を残しておく。
竹から砂糖は作れるのか
すなわち竹に糖分が含まれているかどうかという疑問だが、結論としてはイエスで竹の中にも糖分は含まれている。「竹材の成分分析試験(III)-遊離糖分量の分布,季節変動と虫害との関係について-」(森田慎一 鹿児島県工業技術センター 1984)によれば、竹の中に含まれている遊離糖(ショ糖やブドウ糖などの単糖類、二糖類)は多くて約5%程度含まれているようだ。サトウキビの搾汁で70~80%、ビート(テンサイ)で16~20%程度らしいので少ないと言えば少ないが、メープルシュガー(カエデ糖)の原料であるカエデの樹液は2~5%程度らしいので、理屈の上では竹の樹液を数十リットル確保できるなら、それを濃縮することで竹の砂糖は作れるのかもしれない。作れるのかもしれないが、竹から砂糖が作られたという記録が残っている気配も薄そうなので、現実的ではないのは間違いないだろう。
また、竹で砂糖を作るのは難しいにしても、竹の内部で糖液が溜まりアルコール発酵することはあるようだ。
竹糖・砂糖竹・竹蔗
「歴史の史料」に竹の砂糖の記載があるというのは間違いではないと思うが、字面だけで竹の砂糖が実在していたと勘違いしている可能性も考えられる。たとえばサトウキビ(甘蔗)の別名が砂糖竹や竹蔗であったり、伝統的な製法で作られる和三盆に使われるサトウキビは竹糖(細黍)と呼ばれる在来品種であったりと、竹という言葉が頻出している。おそらくサトウキビの外観が、竹のように細いのでなぞらえて呼ばれているのだと思われる。
今の所分かっているのはこれくらい。誰かこれ以外の情報を知っていたら教えてほしい。
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