エジプトの製糖はサトウキビとテンサイ(ビート)の両方を生産している。サトウキビは国営企業1社で、テンサイは民間企業2社がカイロ北部で栽培・生産をしているようだ。2021年の国内生産は約285万トン(サトウキビ糖が約127万トン、ビート糖が約158万トン)だが、国内消費は約343万トンと上回っているため、20%程度の不足分である約83万トンは輸入に頼っており、主にブラジルから9割程度輸入している(残り1割はEUから)。輸出も若干しており(約30万トン)、主な輸出先はスーダンとケニアが半数を占めている。
エジプトは以前から砂糖の国内消費量と生産量に差があり、その生産量の不足分(ギャップ)を解消するためにビート製糖が昔から国策として進められている。最近では2020年にアラブ首長国連邦(UAE)とエジプトとの共同プロジェクトとして約10億ドルを投資し、テンサイ栽培からビート製糖を行うCanal Sugar(カナルシュガー)を設立しており、2021年から操業を開始し、2023年には約100万トンの需給ギャップの約80%(約80万トン)をカバーする見込み。
甜菜がエジプトでも栽培されているというのは意外な印象があった。北海道やロシアなどの寒冷地で育てられているというイメージがあるが、実際には甜菜の原産は地中海沿岸なので幅広い気候帯で栽培可能で、エジプトのような砂漠気候であっても灌漑などにより栽培可能のようだ。サトウキビ製糖はエジプトでは710年頃から原始的な手法で行われており歴史も古いが、現在の製糖工場のように近代的な手法が導入されたのは1818年頃から。
Canal Sugar(カナル・シュガー)
エジプトで世界最大規模の甜菜糖(ビート糖)工場として2020年に設立された合資会社で、2022年から公式操業を開始しており、年間約90万トン以上の生産能力を持つと見込まれている。同工場はアラブ首長国連邦(UAE)とエジプトで10億ドルの投資がなされ、約18万エーカー(約76000 ヘクタール / 790平方キロメートル)の栽培地と約45万トンの貯蔵能力を持つ世界最大の砂糖貯蔵用サイロを有しており、エジプト国内でも1952年以来最大の農業プロジェクトの位置付けとなっている。また10億ドルの出資比率はUAEの製糖会社であるAl Khaleej Sugar(アル・ハジーリ・シュガー)の取締役であるJamal Al Ghurair(ジャマル・アル・グレイル)のグループとエネルギー系投資ファンドであるMurban Energy(マーバン・エナジー)がそれぞれ37%と33%を出資し、残りの30%をエジプト国立銀行の子会社であるAl Ahli Capital Holdingが出資している。
Egyptian Sugar & Integrated Industries Company(ESIIC)
国営企業でサトウキビによる製糖を独占的に行っている。元々の母体はベルギーとの合資会社として1881年に操業を開始し、1892年のフランスとの合資会社の設立や統合を経て、1993年に現在の社名となっている。ESIICにおける生産量は国内の製糖量の約50%を占めているとホームページには記載されていたが、近年はビート糖が上回っているようだ。2021年の国内のサトウキビ製糖量は約127万トンで国内の年間製糖量の約44%に相当する。
Daqahlia Sugar(ダカリア・シュガー)
1981年で設立された製糖会社でビート糖の生産がメイン。ビートパルプペレットの輸出などもしている。工場はダカリアの1つが稼働しており、年間の生産量は約30万トン。
Delta Sugar(デルタ・シュガー)
1978年に設立された、エジプト国内で初のビート糖の製糖会社。ダカリアシュガーと同時期かつ同規模の工場を持ち、年間の生産量は約30万トン。
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