タイ産砂糖にAD(アンチダンピング)課税【ベトナム】

 2021年2月9日にベトナム商工省はタイ産の砂糖の輸入急増が、国内の砂糖産業にダメージを与えているとして、タイ産の砂糖にアンチダンピング課税の暫定発動を発表した。アンチダンピング課税率は33.88%とし、5月16日から5年間の発効となる。

アンチダンピング(AD)課税とは

 経済産業省のHPによると、

・AD(アンチダンピング)措置とは、輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が、輸入国(日本)の国内産業に被害を与えている場合に、その価格差を相殺する関税を賦課できる措置のことです。この措置は、WTO協定(GATT・AD協定)において認められているものです。

・ AD措置は、原則、国内生産者(申請企業)からの申請(課税の求め)に対し、経済産業省・財務省等からなる調査チーム(調査当局)による調査(原則1年、最大18カ月)を行い、要件を満たしていることが認められた場合に発動されます。課税期間は原則として5年以内ですが、期限内に正当な見直しが行われた場合には延長されます。

 要するに、輸入しているタイ産の砂糖が自国(ベトナム)の砂糖よりもかなり安価なため、ベトナム国内の製糖企業に深刻なダメージを与えていることから、その価格差を是正するために、タイ産の砂糖に関税(33.88%)をかけるという内容。2020年9月から、ベトナム国内の製糖業界の要請を受け、ダンピングの予備調査を行った上での決定となる。

タイ産の砂糖の輸入が急増した理由

 タイ産の砂糖の輸入量が増加した背景として、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)により、2020年にASEAN諸国原産の輸入砂糖の関税を撤廃したことから、ベトナムへの砂糖製品の関税が85%から5%となり、ベトナムへのタイ産の砂糖の輸入量が約130万トンと大幅に増加((2019年比で330%増=約3.3倍)し、その影響による輸入砂糖の急増と考えられている。また、タイ政府の補助金政策による同国産砂糖の輸出価格の低下も原因と見られている。

 ベトナムはASEANにおけるタイの砂糖輸出市場シェアの約26%、世界の18.5%を占めている。また、タイは世界第4位の砂糖生産国であり、ブラジルに次ぐ第2位の輸出国であるが、2020年は粗糖の国際価格が上昇していることと、原油価格の上昇によりブラジルでのサトウキビがエタノール生産に向けられると予想されることから、タイ産の砂糖(粗糖)の国際需要は高まっていると見られる。さらに、タイでは一部の地域を除き、サトウキビ圧搾汁からのバイオエタノール生産が認められていないため(許可されているのは粗糖と糖蜜のみ)、サトウキビのほとんどが砂糖生産に向けられている背景もある。

アンチダンピング課税後の動き

 2020年6月時点では、ベトナムがタイ産の砂糖製品にアンチダンピング課税の発効後、タイからの砂糖の輸入量は2020年の月平均11万トンから約2万8000トンに減少し、約75%減少したとベトナム商工省が報告。

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